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第9回 シリーズを彩るサウンド

GOD EATER ORCHESTRA LIVE ~フェンリル極東支部公演~


渥美 航
株式会社バンダイナムコスタジオ所属。
第一作「GOD EATER」の立ち上げからシリーズに携わる。
最新作「GOD EATER 3」ではディレクターの他、シナリオも一部担当。

椎名 豪
2017年株式会社バンダイナムコスタジオ退社後、フリーで活動中。
「GOD EATER」をはじめとする多くの人気ゲーム、アニメ作品の音楽を手がける。
「GOD EATER」の挿入歌“神と人と~vocal ver”は
日本のメディアで唯一のHollywood Music in Media Awards 2010にノミネートされ大きな注目を集めた。


――今回のテーマは「サウンド」。ストーリーの情緒や戦闘の臨場感を体感させてくれる数々の楽曲について、お伺いできればと思います。まずは、そもそも椎名さんが「GOD EATER」シリーズの楽曲制作を担うようになったきっかけは何だったのでしょうか?
椎名さん
もともと、ディレクターの吉村さんとは別タイトルの仕事でご一緒しており、密にやり取りしていました。そんなとき、吉村さんが新しいタイトルに取り組んでいると伺い、その新作の効果音を作ってほしいと頼まれたことがきっかけです。その後、プロデューサーの富澤さんたちと内容を詰めていく中で、最終的に現在の「GOD EATER」シリーズとしての形ができ上がりました。


――続いて、楽曲の作り方について教えていただけますでしょうか?
椎名さん
一番最初のときは、ステージのイメージボードをいくつか見せてもらい、鉄骨なのか木材なのかなど素材をヒアリングし、そこからイメージを広げて使用する楽器を決めていきました。また、ストーリーの内容がベースとなる楽曲は、プレイヤー感情がどのように変遷していくのかを説明してもらい、その展開や演出に合うように作り上げていくことが多いです。たとえば、あるキャラクターがこのあと重要な役目を担うことになるので楽曲で盛り上げてほしい、という感じですね。

渥美さん
『GOD EATER 2』のときは、わかりやすくするため実際に感情ラインを書き起こしたりもしました。

椎名さん
制作側は最初から最後までの話の流れがわかっていますが、プレイヤーは流れがわからない前提で楽曲を聴くということを踏まえる必要があり、いかに客観視できるかが重要です。なので、制作側にプレイヤーの感情ラインを作ってもらうことが多いですね。それを見て自分自身がプレイヤーの心情をなぞることで、「あ、プレイヤーはここで盛り上がるのね」というのがわかりやすくなるんです。また、楽曲の傾向としては、全体を通して最初と最後を盛り上げることが多いですね。ちなみに、一番最初に着手したのはテーマ曲「ゴッドイーター」でした。その次が、ヴァジュラの登場時に流れる「街を覆う影」だったと思います。そのあと、公式サイト用のBGMをどうしようとなったとき、前述の2曲が強めの楽曲だったこともあり、少しおとなしめの曲調でもう1曲ほしいと考え「神と人と」を作っていきました。ちなみに『GOD EATER』のときはPSPでの発売だったので、容量もかなり制限されていて作るのが大変でした。楽曲を作る上でのそういった制約があったからこそ、短時間での盛り上げを意識したという面もあります。


――制作を発注する際は、どのようなことを伝えているのでしょうか?
渥美さん
基本的に「GOD EATER」シリーズは厳しい環境下で繰り広げられるストーリーというものが根幹にあるため、「ラスボス戦なので壮大な楽曲を作ってほしい」など、そのシーンの雰囲気を伝えてオーダーすることが多いです。基本的には企画側から細かな楽器等の指定をすることはなかったのですが、唯一『GOD EATER 2』の楽曲制作では子供の合唱を入れてほしいとリクエストしたことがありました。

椎名さん
発注いただく際、吉村さんが「こういう世界を表現したい」ということを詳しく説明してくれるので、そこからイメージを広げて表現することが多いです。ただ、中には当初の想定と違うシーンだとしっくりくるようなこともあり、たとえばオロチとの戦闘曲である「黒の一閃」は、もともとクロムガウェイン用の楽曲として作りましたが、結果的にオロチ戦にマッチしました。


――曲名はどのように決めていますか?
渥美さん
『GOD EATER 2 RAGE BURST』までは、基本的にゲーム中のどこでどの楽曲が使われるかを先に決めていました。たとえば、贖罪の街で戦う際の「街を覆う影」に関しては、『GOD EATER』で一番初めにプレイヤーが耳にする戦闘曲になることが決まっていたため、アラガミの強大さ、迫りくる感じを伝えられるような曲名にしようと考えていたように思います。プロモーション上でも「巨大な敵が登場!」という言い方をしていましたので、そこから巨大な影が街を覆うという着想を得た部分もありますね。この曲に限らずですが、曲名を付ける傾向として、抽象表現と具体表現を組み合わせる傾向があったかもしれません。また、戦闘曲の場合は、アラガミ側の脅威が曲に表れているのか、はたまたプレイヤー側の心情が表れているのか、楽曲から受ける印象から命名しています。あと、とても細かい話ですが、実は各シリーズのラスボス付近で1曲だけラテン語の格言由来の曲名を付けていて、そのシーンで一番重要となるキャラクターの心情を表現してみました。たとえば『GOD EATER』のラスボス曲は「Deo Volente」という曲名ですが、「神の御心かなえば」などがそうですね。

椎名さん
楽曲を納品するとき、ファイル名に仮の曲名を入れているので、そこからあまりにも逸脱したものが曲名として上がってくると「どうしてこうなったの?」と聞くことはあります。たとえば「Wings of Tomorrow」は最初、邦題で「明日への翼」と名付けていましたが、渥美さんが英語に変更しています。あとから時系列で並べてみると、ここは英語でよかったなと思います。あと、「何とかなります!」という曲名にはびっくりしました。

渥美さん
カノンらしいのでいいかなと思いました(笑)。

椎名さん
ほかの曲名は「渥美さんっぽいな」と思うことが多いのですが、これにはびっくりしました。いつも曲名が上がってくるのが楽しみです。

渥美さん
実はちょっと皮肉めいた曲名にすることは多いかもしれないです。たとえば、神機兵との戦闘で流れる「大義の傀儡」は神機兵=ジュリウスの傀儡という意味合いで付けましたが、実はジュリウス自体も“ラケルが掲げた大義の人形”になっているというところにも掛けています。先ほど椎名さんに挙げていただいた「何とかなります!」のように、ちょっとキャラクターをいじっているような曲名にすることもあり、「カントリーカウガール」などもかっこよく英語でというよりは、カタカナの方がウララらしさが感じられるかなと思って付けましたね。

椎名さん
カタカナでいうと、「NEO ブリーフィング」の「NEO」だけ英語で「ブリーフィング」がカタカナだったのはけっこう衝撃でしたね。

渥美さん
逆です、逆! 私が全部カタカナで提示したら、「ネオがカタカナは古くない?」って椎名さんが言ったんです!

椎名さん
そっか! 今考えてみると、全部カタカナの方がいいんじゃないかって思っちゃったよ、ごめんね(笑)。


――「GOD EATER」シリーズで特に印象的な楽曲について、エピソードがありましたら教えてください。
■「No Way Back」 椎名さん
実は「No Way Back」は賭けでした。最初は歌が入っておらずメロディだけの予定でしたが、ここはちょっと捻ろうかなと思い、歌を入れてみようと挑戦しました。楽曲の中で「ゴッドイーター」と同じメロディが使われていたりと、少し遊びを入れたくなることがよくあるのですが、初めてそうした遊びを入れたのはこの楽曲でしたね。

渥美さん
ユーザーの方々からはかなり人気の高い楽曲ですよ。

椎名さん
そうなんだ! 嬉しいですね。

■「神々の食卓」 椎名さん
「神々の食卓」は難産だった覚えがありますね。「もう少し尺が長ければいいのに……!」と思いながら作りました。1分で何とか盛り上げないといけないけど、スピード感を上げればいいという話でもないので、かなり大変でした。特に、敵と戦う前提でのスピード感と重さのバランス取りが本当に難しかったです。最後の3連符が重さの表現部分ではあるものの、曲を破綻せずにループの長さの中に治めるのがとにかく大変で……。

渥美さん
完成したものを聴くと、実際の戦闘のテンポ感とすごく合っていたイメージですよ。ノリよく戦える印象があります。

椎名さん
あとはタイトルをつけてくれた渥美さんの力量ですね。

■「神と人と」 椎名さん
「GOD EATER」シリーズの楽曲制作は、吉村さんとの雑談の中に方向性を見出すことが多いです。たとえば、最近観たアニメや映画などの感想を話す中で、吉村さんがどういった部分をよかったと感じたのか知り、そこから汲み取ったイメージを自分なりに咀嚼して、楽曲として表現することがよくあります。もちろん、ちゃんとした発注書はありますが、それ以上にお互いの感性を理解し合える信頼関係があるからこそ、楽曲制作が成り立っていると感じますね。この「神と人と」もそういった流れで生まれた楽曲で、「ゴッドイーター」が表向きの華やかなテーマソングだとしたら、「神と人と」は「GOD EATER」シリーズを表現する上で欠かせないストーリーや設定、作品のモチーフを象徴するようなテーマソングになっています。

■「明日へと絆ぐ」 椎名さん
吉村さんから「今までの世界観から一新したい」と要望があり、作ったのがこの楽曲です。『GOD EATER 3』は新しいキャラクターが大勢登場し、視覚的にもとても賑やかになった印象がありましたので、その雰囲気をどうすれば表現できるかという点にこだわりました。加えて、マップの広さを表現するために、合唱を曲の頭にどんと据えてみました。余談ですが、合唱パートでお呼びした外国の方々に差し入れとしておにぎりを100個近く持っていったら、皆さんがおにぎりの海苔にびっくりされていたのが印象的でした。海外では海苔がご飯に巻かれたものがとても珍しいんだなと思い、そんなちょっとした出来事の印象が残っていることもあって、この楽曲は思い入れがありますね。

■「無垢なる瞳」 椎名さん
もともと童謡のように普段から口ずさめるような楽曲があるといいなという考えがあった中で、「無垢なる瞳」はキャラクターに関する思い出なども含めて、ふと思い出したときに歌えるような親しみやすい楽曲になればと思って作りました。


――お二人にとって思い出深いのはどの楽曲でしょうか?
■『GOD EATER』 椎名さん
作ったのがあまりにも前なので、語るのは『GOD EATER』が一番難しいですね。今の感覚と昔の感覚では、だいぶ捉え方が異なると思うので。ただ最初だったこともあり、難産だった楽曲がいくつもあるのでどれも思い入れは強いです。たとえば「神と人と」だと、当初のイメージからイベントなどでやるごとに形が変わっていった楽曲だなと思いますね。

渥美さん
私もやっぱり「神と人と」が一番思い入れがあります。当時は公式サイトに使うには暗すぎるのでは、という話も出てきましたが、私はものすごくこの曲でいきたいと推していました。下世話な話ですが、「この楽曲なら絶対お客さんの心を掴める!」と強く感じたのを覚えています。プロジェクトを進める中で、「これはいける!」と思えるターニングポイントがいくつかあるのですが、最初にそう思ったのは実はこの楽曲を聴いたときでした。

■『GOD EATER 2』 椎名さん
パッと思い浮かんだのは、すごく作るのが難しかった「運命を共に」です。ちょうどストーリーの転換のタイミングで使う楽曲でしたので、わざと明るい曲調を入れることで、そのギャップを活かして表現しようと試みた、作りがいのある楽曲でした。また、「光のアリア」はほかと歌の作り方が違ったという点で印象に残っています。作曲の際、歌手の方の歌声をその場で聴きながら「今の歌い方がよかったのでこのメロを採用、不採用」、「こういった感じで歌ってもらえますか?」と言って曲を作り上げる、かなり贅沢な作り方でした。

渥美さん
「光のアリア」も印象に残っていますが、ほかの楽曲だと「淘汰される者」が好きです。アラガミに感応種という新種が登場し、かつてのゴッドイーターはまともに戦えず、そうした状況下でブラッドが生まれた……という作品世界に沿ったハードな印象が曲調からも伝わってきて好きなんです。あとは「友は此処に」もいいですね。初めて聴いたときから「これは絶対ゲーム内で効果的に配置したい」という思いがあり、とあるキャラが家出して戻ってくる際の戦闘で初めて流れるようにし、その次に流れるのが2回目のマルドゥーク戦になるようにしました。「友達がそばにいる」「友達は心の中に有り続ける」そんなメッセージを込めて曲名も付けたような気がします。

■『GOD EATER 3』 椎名さん
やっぱり「明日へと絆ぐ」が一番思い出深いかもしれません。あれはいろんな意味で悩んだ楽曲です。『GOD EATER』や『GOD EATER 2』と比べて色が多く、ダークな感じが少し薄くなっているように感じるけど、その分錆びた銀色が混じっている……『GOD EATER 3』にはそんな印象があり、それを表現するために重い楽曲にしようと決めました。もし「GOD EATER」シリーズを通じて、楽曲のテイストが『GOD EATER 3』で変わったと感じている方がいるのであれば、それは曲中に込めた“希望の量”からくる違いだと思いますね。実は『GOD EATER』はほんの少ししか“希望”を入れず、『GOD EATER 2』は時系列で“希望”の入れ方を変えたけどやはり量は少なめ、しかし『GOD EATER 3』では“希望”を多く入れているんです。露骨にわかるようにはしていませんが、明確に“希望”を入れ込もうと思って手がけたので、その違いにも注目してもらえればと思います。

渥美さん
「灰底の都」はアップデート1.30のPV制作時に使用して、個人的にPVのシーンと上手くマッチさせることができたので印象に残っています。あとは「明日へと絆ぐ」や、ラスボス戦の「Supra Omnia」も好きですね。全体的に『GOD EATER 3』の楽曲は皆で乗り越えていこうという希望の曲が多いですが、「Supra Omnia」に関してもそれがとても強く感じられてよかったです。ほかには、「Nemesis」もとても印象深い楽曲だと思います。

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