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「GOD EATER ONLINE」が帰ってくる!
ストーリーノベル 第四章

「GOD EATER ONLINE」 STORY NOVEL ~4章-1話~

「改めて、ヒマラヤ支部長に就任したクロエ・グレースだ」
 支部長室に集められた俺たち第一部隊とゴドー、カリーナの五人を前にして、白いコートに身を包んだ女性は、自信に満ちた表情で名乗りを上げる。
 端正で人形のように綺麗な顔立ち。ライトブルーの瞳に、雪のような白い肌。
 金色の髪は綺麗にまとめられている。引き締まった表情と大きく鋭い瞳には、得も言えぬ威圧感があった。
「前職はロシア支部、第三部隊所属のゴッドイーターで、ロシアでは最古参の部類に入る。……何か質問は?」
 手短に自分のことを説明した彼女は、俺たちに向けて視線を投げた。
 レイラが真っ先に口を開く。
「第三部隊所属と言いましたが……隊長や支部の幹部ではなく、ただのゴッドイーターだったと?」
「以前は隊長を務めていたが、力が衰え、引退が迫っていてな。後進に要職を任せていた」
「それで前線から退くことに?」
「そう捉えてもらって構わない。まだアラガミ討伐に出ることは可能だがな」
 クロエは淡々とそう返した。彼女の実力は未知数だが、冗談の類とも思えない。
 レイラも納得したようだったが、今度はゴドーが一歩だけ距離を詰める。
「ここに来た理由は?」
「人を救うために来た、では理由にならないか?」
 クロエは凛とした姿勢を微塵も崩さない。
 不自然なほど潔癖な彼女に、ゴドーは僅かに眉をひそめる。
「ヒマラヤ支部はフェンリル本部や他の支部から支援を断られ、孤立している極めて苦しい状況にある訳だが……これを君は救えると?」
 リュウも同じように感じていたらしい。訝しむような視線をクロエに向けた。
「僕も気になっています。救うため、と言いましたがどうやって?」
「状況は把握しているし、無策でここに来た訳ではない」
 この質問が来ることも想定していたのか、彼女は間を置かずに頷いてみせる。
「問題解消までスリーフェイズを設定し、苦境を打開する用意がある」
「スリーフェイズも……? ずいぶん計画的ですね」
 その言葉に、カリーナが驚き目を見開く。
 先々の状況まで予測できていなければ、長期的な作戦は立てられない。
 不確定要素の多いこの状況で、それを打破する策を用意しているというのだろうか。
 とはいえ口にするだけなら簡単だ。
「具体的には?」
 続く俺の問いにも、彼女は自信に満ちた表情を崩さない。
「最初のフェイズで行うのは『支部の安全確保』だ。クベーラ、ネブカドネザルを討伐し、アラガミ増加問題を解消する」
 彼女から出てきた固有名詞に、リュウが意外そうな反応を示した。
「ネブカドネザルのことまで、すでに把握しているのか……」
「あくまでデータにある情報だけだがな」
 白毛のアラガミ――ネブカドネザルの情報は、まだ外には出ていない。
 つまり彼女はこの支部に到着してからの短い間に、主要なデータのほとんどに目を通したことになる。
 とはいえ、それだけでクベーラとネブカドネザルを討伐できるとも思えないが……
 少なくとも、クロエの自信は本物だ。
 リュウは思わず言葉を飲み込んでしまった様子だが、ゴドーはその間も冷静だ。
「仮にアラガミの増加を解消できたとして、フェンリル本部は掌を返すかな?」
 ゴドーの言う通りだ。
 フェンリル本部が俺たちと連絡を絶ったのは、この支部の崩壊が避けられないと判断したからだろう。
 俺たちの生存などありえないし、むしろ生きていては不都合だと考えられてもおかしくない。
 支部ごと見捨てるという非人道的な対応は、知られればフェンリル全体への不信感につながるだろう。本部はこれを避けたいはずだ。
 だから、いまさら本部が俺たちを助けてくれる可能性は、限りなく低い。
 ゴドーの考えが間違っているとも思えないが、クロエの余裕は崩れない。
「そこで次のフェイズに移行し、サテライト拠点を建設する」

(サテライト拠点を……?)
 クロエの意図が読み込めず、俺は内心首をひねった。
「あの……サテライト拠点とは?」
「サテライト拠点とは、支部を取り巻く壁の外に建設された、人が安全に暮らせる設備を備えた居住地のことさ」
 小首をかしげたカリーナに、リュウが解説する。
「元は支部に収容されなかった人々が少しでも安全を確保できるように、支部の対アラガミ装甲壁を真似て作った壁で集落を囲ったのが始まりらしい」
 ようするにサテライト拠点とは、支部の外側に作られた居住区施設のことだ。
 俺もヒマラヤ支部に来るまでは、独立支援部隊クレイドルの一員として、サテライト拠点の建設候補地の探索、確保、建設などの任務についていた。
 いまや生存圏のほとんどをアラガミに奪われた人類にとって、サテライト拠点の建設は急務と言える。だが……
「ヒマラヤ支部は人口が少なく、住居は足りているはずですが、なぜサテライト拠点を?」
 レイラの疑問はもっともだ。
 人手不足のなか、危険を冒してまで居住区を拡大する理由が分からない。
 全員が同じ疑問を抱くなか、ゴドーだけは納得した素振りを見せる。
「ああ……読めてきたぞ」
 彼の予測を肯定するように、クロエが一つ頷いた。
「ヒマラヤ支部周辺には広い土地がある。アラガミが減り、サテライト拠点を安全に建設、維持できれば……」
 全員の注意を集めるように、一度言葉を切ってから彼女は続けた。
「最終フェイズとして、大型サテライト拠点を建設し、他の支部から移民を受け入れる」
「移民を……?」
 眉をひそめたレイラに対し、クロエに代わってゴドーが答える。
「アラガミ出現以来、世界の人口は減り続けてきたが、最近になって増加傾向に転じたという統計がある」
 それだけを聞くといい情報に思えるが、クロエは表情を緩めない。
「そう……多くの支部が人口増加と居住地の不足という問題を抱えている」
「それで、大型サテライト拠点の建設を?」
 俺の問いに、クロエは迷いなく首肯を返した。
「そう。各支部でもサテライト拠点は増やしているが、まだまだ足りないのが現状だ」
 彼女の言葉を補うように、ゴドーが口を開く。
「周辺地域に強いアラガミが多数いる支部では、サテライト拠点の建設と維持は難しい。だが、ヒマラヤ支部が元の過疎地に戻れば……」
「居住地不足の支部に対して、移民受け入れは有力な交渉材料になる」
 そこまで言って、クロエとゴドーは互いに黙って見つめ合った。
 お互い表情には出さないが、実に剣呑な雰囲気だ。その実力や思考スピードを、測り合っているようにも見える。
「セイ、君はどう思う?」
 ゴドーが俺に話を振ってくる。その間も視線はクロエに向けたままだ。
「…………」
 改めて、クロエの立てた計画について考える。
 ようするに彼女は、ヒマラヤ支部に価値を持たせたいのだろう。
 ヒマラヤ支部が支援を受けられないのは、現状そうする価値がないからだ。
 本部に見捨てられ、アラガミが増え続け壊滅寸前……そんな状況では、誰にも見向きされないのも仕方ない。
 だからこそ、他支部がつながりたいと思えるほどの付加価値が欲しいのだろう。
 理屈は分かる。魅力的な提案だとも思う。しかし……
「机上の空論では……?」
 現時点では、こう答えるしかないだろう。
「その通りだ。スリーフェイズに段階を分けたのは、その都度計画を見直すためでもある」
 否定的な俺の指摘に対しても、クロエは動じることなく頷いた。
 計画通りにいかないことも織り込み済み、ということか。
 ただの思いつきではなさそうだが……なんにせよ、決定を覆すつもりはなさそうだ。
「ふむ……他のみんなはどうだ?」
 ゴドーの慎重な問いかけに対し、真っ先に発言したのはカリーナだ。
「私は感動しています! 少なくともポルトロン支部長からは絶対に出ないアイデアですから!」
「そんな人もいましたね……」
 淡白なレイラの言葉はともかく、カリーナはクロエを信用したようだ。
 更に正確に言うなら、クロエの能力を信用した、というところだろう。
 実際、彼女の能力や資質の高さについて、疑いの余地はなさそうだ。
 問題は、人間として信じるべきかどうかだが……
 満面の笑みを浮かべるカリーナに続いて、リュウが口を開く。
「クロエ支部長の計画に賛成です。少なくとも、反対する理由はありません。ゴドー隊長もそう思いますよね?」
 リュウの言葉で、その場にいた全員の視線がゴドーに集まる。
 ゴドーはクロエから視線を外し、ため息を吐いた。
「まぁどちらかと言うなら賛成だが……クベーラやネブカドネザルの討伐が最低条件となると……楽じゃないぞ」
「そうですね。クリアすべき課題は山積み……ですが、その先に光明が見えるなら、わたくしは良いことだと思います」
 どうやら皆、クロエの案を概ね好意的に受け取っているようだ。
 俺の意見もリュウと変わらない。計画に反対する理由は見つからなかった。
 しかし、クロエという女性が信用できるかどうかは、まだ判断材料が足りない。
「支部再建案は、前向きに受け止めてもらえたようで何よりだ。次に――」
 俺の視線に気づいてないとも思えなかったが、クロエは構わず話を続けようとした。

「あっ、ちょっと待ってください!」
 しかしそこで、カリーナが唐突に声を上げた。それから、慌てて通信機に手を当てる。
「……はい、はい……分かりました!」
 あまりいい連絡ではなかったのだろう。
 彼女は深刻な表情で、クロエのほうへ向き直った。
「補修が終わっていない支部外壁の第六ブロックにアラガミ接近中! クロエ支部長、ご指示を!」
「了解した」
 新任の支部長は、特に動じた様子もなく俺たちに視線を移す。
「まず、ゴドー君は第一部隊の隊長に戻り、隊員を率いてくれ」
「承知した」
 クロエの決定に、ゴドーは当然のように頷いた。
 彼女に支部長を取って代わられたことに対し、思うところはないのだろうか……
 いや、彼の場合、もともとポジションに拘っていた訳でもない。必要がなくなったから隊長に戻るのだろう。
「…………」
 だとすればゴドーは、彼女を支部長として認めたのだろうか。
 そんなことを考えていると、不意にレイラから指をさされた。
「それじゃ、彼はこれからどうなるのです?」
(ん、俺か……?)
「ゴドーが隊長に戻るということは、隊長代理は必要ありませんわよね」
 言われてみれば、レイラの言う通りだ。
 俺はゴドーの代わりとして、他の人員がいないから、仕方なく隊長代理を任されていた。
 ということは当然、隊長代理は解任となるだろう。
 肩の重荷が下りた気分でいると、クロエが今度はこちらへ目を向ける。
「隊長代理を務めていた君は、隊長補佐として彼をサポートするように」
「隊長補佐……ですか」
「不満か?」
 俺の様子を見て、クロエが尋ねてくる。
 いざという時にゴドーに代われる人員を置いておきたいのだろう。その考えは理解できた。
 しかし問題は、補佐する相手がゴドーだということだ。
 レイラとリュウがトラブルになれば、その仲裁は俺に押しつけられるだろう。
 なんならゴドーの仕事や面倒まで、俺が見ることになりかねない。
 その他にも、懸念事項はいくつもある。
「できればヒラに戻りたいんですが……」
「ダメだ」
「……」
 俺の言葉を、ゴドーがあっさりと遮った。
 納得できずにいると、クロエは全てを見透かすように瞼を閉じた。
「人事に関しては改めて伝える。今はゴドー隊長率いる第一部隊でアラガミに対処してくれ」
「……了解」
 抵抗を諦めた俺は、ため息交じりに頷いた。
 するとそこで、各チームと連絡を取っていたカリーナが明るい声を上げる。
「神機の整備、できているとのことです!」
「了解! 行きましょう!」
 そうしてレイラやリュウが、急ぎ足で支部長室を後にする。

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