ゴッドイーター オフィシャルウェブ

CONTENTS

「GOD EATER 3」キャラクターノベル 第五章 イルダ編「白き花の名の下に」


「GOD EATER 3」キャラクターノベル イルダ編「白き花の名の下に」 ~第五章-9話~
 久しぶりに、リカルドとエイミーの二人と長い昔話をした気がする。
 一夜を明かした私たちは、ハウンドの面々と共にミナト・クリサンセマムへと到着した。
 エントランスに降り立った私たちを、真っ先に出迎えてくれたのは――
「ふひひ……みんな、おかえり!」
 満面の笑みを浮かべたフィムが、ルカの腕に飛び込んでくる。
「うん、ただいまフィム。……けどこれは?」
 エントランスには養護施設の子供たちも勢ぞろいしていて、あちこちに飾り付けが施されていた。
「あのね! みんながかえってくるから、おむかえのサプライズ、しようねって! イーリスと、みんなでつくったの!」
 傍らで、子供たちに囲まれていたイーリスの元にフィムが走っていく。
「えへへ、お帰りなさいイルダお姉ちゃん。みんなも、お仕事ご苦労さま!」
 ハウンドとの合流以降、適性を考えて船を下りる決断をした彼女は、今も私たちが不在中のミナトを管理してくれている。
 ――かつてペニーウォートが灰嵐に襲われた時、真っ先に彼らの救出を進言してくれたのはイーリスだった。
 迫る灰嵐の中、感応レーダーからの強烈な負荷を受け、負傷しながらもミナトへの道を切り拓いてくれた彼女がいなければ、運命は変わっていただろう。
 クリサンセマムで暮らす子供たちに寄り添いながら、私たちの帰る場所を守り続けるその姿は、あの頃と変わらない。
 優れた感応能力を持つ者同士通じ合うものがあったのか、後任者のルカともすぐに打ち解けてくれたことには本当に安心したものだ。
「みんな! おいわいのパーティ、しよう!」
 フィムの無邪気な微笑みに、みんな肩をすくめて見つめ合う。
「はは、二日続けての祝賀会になっちまいますね……」
 子供たちに聞こえないよう小さな声で言うリカルドに、私も苦笑する。
「いいんじゃないですか? みんなも喜びますし」
 進み出たエイミーがそう言って微笑む。
「そうね。みんな、子供たちと一緒に羽を伸ばして頂戴!」
 ――ミナトのあちこちに咲く、クリサンセマムの花。
 私は、この花に相応しい理想郷に近づけているだろうか。
 答えはまだ出ないけれど。
「イルダ! いっしょにケーキ、たべよ?」
 ヒトも、正規ゴッドイーターも、AGEも、アラガミですら共に笑い合えるこの場所は、多くの願いが生み出した一つの奇跡だと思っている。
 絶望の中にあっても堂々と咲き誇るこの場所を、これからも私は守り続けよう。
 愛すべき、家族たちと一緒に。



著  翡翠ヒスイ(株式会社テイルポット)
原案 吉村 広(株式会社バンダイナムコスタジオ)

1 2 3 4 5 6 7 8 9
CONTENTS TOP